原研哉氏デザイン特講

原研哉氏のデザイン特講行ってきた。DesignChannelという番組の公開収録。
一昨日間違えて行った用事である。
原研哉氏は、グラフィックデザイナーでアートディレクター。プロフィールについてはここに詳しくあるので省略しますが、あなたの知っている広告とか装丁のお仕事があるかもしれません。
お話は、4部構成+アルファで。4.5部って感じでしょうか。内容に関しては番組で紹介されるのであまり詳しく書きませんが、備忘録的に書いておきます。
RE DESIGN
2000年のTAKEO PAPER SHOWの展示で、ごくごく身近なものを、再度見つめ直し、デザインするプロジェクト。トイレットペーパーやマッチのようなシンプルなものでも、少し違う解釈や意味を付け加えることで、グッと魅力的に見えたり、奥行きがあるように感じられて、デザインの力を感じることができる。例えば佐藤雅彦さんがデザインし直した成田空港で押される出入国のスタンプ。現状は□(出国)と○(帰国)なのだが、これを飛行機が左右に向いたデザインした。わかりやすくてなかなかいいし、スタンプが一杯になるとパスポートのページに飛行機が沢山飛んでいることになる。毎年何万と言う日本を訪れる外国人に「おっ、この国なかなかやるな。」と思ってもらうこともできる。これを既存メディアを使ってやると大変なのだが、出入国記録というメディアを使うと出来ることもあるのだ。ちなみにお気に入りの出入国スタンプはEUのもので、
eu_in.jpg
入国
eu_out.jpg
出国
となっている。枠の形と左下の矢印で出入国がわかる。右上の飛行機は空路で出入りしたためで、鉄道で入ると列車のアイコンになる。それは押してもらったことがないので、いつか無理矢理陸路で入国したい。
話がそれたが、RE DESIGNは、海外でも巡回展が行われて、本にもなっているので、興味を持たれた方は、そちらに詳しく載ってます。
HAPTIC
2004年の同じくTAKEO PAPER SHOWの展示。デザインという行為は、造形や色彩という部分に、目がいきがちなのだけど、
haptic;【形】 触覚{しょっかく}の[に関する・に基づく]
という意味の通り、それを見るだけで、なにかに触れたような感触をリアルに想像させるもの。たとえば敷き詰められた玉砂利を見るだけで、足の裏でどのような感触を感じるか、人間は瞬時に想像することができる。このような間隔を覚醒させるものをデザインするというプロジェクト。
こちらもになってます。

色の話。原さんのデザインは白が多い。白という色が感じさせるもの。本当の純白と言うものは、自然にはないのだが、凄く白いと思わせるもの。どうして白を使うことが多くなったか等々についての話。
EX-formation
武蔵野美術大学で4年生に与えているゼミのテーマ。Ex-fromationとは造語でinformationの反対の意味を持つもの。つまり情報を既知化することではなく、あえてわからなくする。「知っている。」と思っていたものの全く違う面を見せることで、「知らなかった。」という感覚をつかむ。題材にした四万十川では、源流から下流までを撮った写真の川の部分に、アスファルト舗装の道路を合成していく。源流部分では川幅がちょうど道路の白線の幅程度しか無いのに、やがて自動車が一台通れる幅になり、だんだんと車線が増え、ヘアピンカーブのように蛇行し、ダムでは巨大駐車場のようになり、下流においては百何十と言う車線の幅の川になる。こういったことはおそらく四万十川のガイドブックのようなものには載っていないし、それを買う人が欲しがっている情報ではないかもしれない。場合によっては四万十川というものがなんなのかよくわからなくなってしまうのだが、人間が共有している車線の幅と白線のピッチを使うことで、最終的には四万十川のスケールがよりリアルに感じられるのである。
Secondary Function
これも原ゼミの研究テーマで、ものが持っている2番目の機能をどう引き出すかというもの。本来その用途に造られたものではないのに、ついつい役割を果たしてしまう機能。カップを文鎮にするとかノートを団扇代わりにすることなどは、まさにそうである。題材はガムテープだったのだが、開封しやすいように切れ込みを入れたり、海苔の模様にしたり(これを白いものに貼るとおにぎりのようになる)、ノートのように罫線を入れたりと、これは深澤直人がやっているワークショップ”Without Thought”に近い内容だったかな。
印象的だったのは、原さんが日本デザインセンター内に設けた事務所に原デザイン研究所なんて大げさな名前をつけて、面白いことをしようと思ったのだが、だんだん仕事が多くなってきて、無駄なものを考える時間が無くなったので、少しはそういう時間が出来ると思って大学に行ったという話。無駄なことを考える時間っていうのは、本当に必要だなと思う。能力いっぱいまで詰め込まれると、どうしても効率的にものを進めたがるのが人間なので、なんというか適当に効率が良くて合理的なもの、当たり前なものしか生まれなくなってしまう。発想に振れ幅が無いとクリエイティブって成り立たないんだろうね。
残念だったのは、講義を聴きにいている人が多くて、この季節は湿気も多いし、スタジオの中が快適でなくて大変でした。人が多いのがダメな人は長く居られないと思ったのだろう、始まる前に帰っちゃう人や、途中で帰る人も何人かいましたね。100人くらい入れればちょうど良いのではないかと思ったが、その1.5,6倍は入れていた感じでした。これはNPO法人のデザイン・アソシエーションが人を入れすぎただけで、原さんが悪いわけではないのに壇上から原さんが「混んでてすみません。」とか謝るし、TV番組の公開収録で興行ではないのだから、数人立ち見がいるくらいでよかったのではないかと思いました。その割にきっちりとオンタイムで始めたがるし、マイクは音声収録用でPA設備も用意してないから講義の内容は聴こえないし、聴きにきている人に対してちょっと失礼というか、あまりいい感じがしなかった。これでデザインだとか言ってるので、おいおいと思ってしまうのでした。観ている人が倒れて救急車呼ぶようなことになったら収録どころではなくなるので改善してもらいたいですね。
ちなみに過去の講義はCreatorsChannelのサイトで動画が見られます。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください