
はじめに
コンパクトなデザインとモデリングのリアルさでデスクトップアンプというジャンルを作り、自宅練習用アンプの定番とも言えるTHR。 自宅で長い間使っていたけれども、どうしても好きになれないのがクリーム色の外観パネルということで改造してしまいました。 アイデアの元はかなり遡ることになるのですが、20年以上前にお仕事でご一緒していた方が当時Neveのプリアンプにハマってて、ノブのデザインとか面白いよねと会話していたのが始まりです。実際Neve 1073という伝説のプリアンプにインスパイヤされたスタジオ用機材だったりは結構あるみたいで、自分もいつか形にしてみたいなと思っていたのでした。
最大の課題は「Neveらしい色」をどう再現するか
特徴的なパーツであるノブは探せばいろんなところで入手できそうでしたが、それ以外の再現が難しい。Neveが正式にその色だと言っていないものの、フロントパネルの色はRAF Blue Gray BS 381C 633と言われていて、この塗料を国内で入手するのは無理だと思っていました。こうなったら近似の自動車用の補修塗料でもいいかと思いましたが、できればスプレー缶がありがたいのに、タッチアップペンが多く、やっぱり色が微妙に違う。もう半ば諦めていたところ(というかこの時点で何年も経過していました)、こちらの古淵工機所さんのサイトで、BS381Cの近似色を一覧にまとめているのを発見したのでした。ここには各色のマンセル値だけでなく、近似の日塗工番号(一般社団法人日本塗料工業会が発行している色見本帳に掲載されている標準色の番号)が掲載されているではありませんか。ここでBS381C 633は65-30Bとわかったので、今度は65-30Bとインターネット上のNeveプリアンプのパネルを何種類も確認。かなり近い色味と確信。これなら標準色なので、入手のハードルはグッと下がる。それでも塗料単体で売っていることが多いけど、調色してラッカースプレーにしてくれるタカラ塗料のラッカースプレー館というサイトを発見。パネルの色については解決の糸口が見えてきたのでした。
もうひとつの壁は文字表示
もう一つのハードルが印刷表示。オリジナルはクリーム色なので黒の表示だが、再現したいのはNeve 1073風です。白というかちょっとグレーっぽい色にしたい。調べたところスタンピングリーフを使って熱転写というやり方があるようですが、綺麗に作るためにはラミネーターで均等に圧着するのをみんなお勧めしている。たかだか1台のためにラミネーターまで導入したくないなと思いながら他の方法もないかと、これも結構長い時間調べていたら、「ハイキュープリント」で水転写デカールの印刷をやってくれるらしい、しかも白印刷も可なので、こちらを使うことにした。
ジャンクTHR5Aを確保
というわけでここから具体的な制作に入るわけですが、いつでもオリジナルに戻せるように元のパネルは取っておきたかったので、新しい個体を手に入れなければならない。パネルが欲しいだけなので、壊れててもいいし、どうやらアコースティック用のTHR5AとオリジナルのTHR5の寸法は同じようなので、ジャンクでオークションに出ていたTHR5Aを格安で入手できました。
塗装とデカール製作
THR5Aを分解し、清掃。激安だったこともあり、鳥の巣かっていうくらいホコリが詰まっており、かなり汚かった。800番のペーパーで塗装面を荒らし、タカラ塗料の「調色屋」から購入したスプレーで着色をする。15分間隔で3回吹き付け。乾燥中に一部着色が剥げて、焦りましたがスプレー缶から紙コップに少量噴射し、ラッカーシンナーで濃さを調整しながらタッチアップで解決できました。デカールを貼るには表面ができるだけ平滑の方がよいというので、GSIクレオス ミスターホビーのMr.プレミアムトップコート<光沢>を15分間隔で3回に分けて吹き付け。元々表面が梨地加工してあるせいか完全に平らにはならない。「デカール シルバリング対策」でめっちゃYouTube観ました。
IllustratorでNeve風デザインを起こす
パネルができたらデカールの準備です(実際のデータ制作はかなり前にやっていた)。Neve 1073の写真を見ながらフォントを探すがドンズバのものは見つけられず、とりあえず一番近そうな「Berthold Akzidenz Grotesk」を入手してみた。オリジナルの文字情報を踏襲しつつ、Neveの特徴であるノブの周りのドットやインプットのI/P表記などを反映し、色は真っ白ではなくPANTONE Cool Gray 1Cに決定、というかよくわからないのでこれでよしとする。Adobe Illustratorでコントロール部分の雰囲気をイラストにしながら細部を調整します。久しぶりの作業は結構楽しかった。Illustratorのデータができたら、ハイキュープリントさんに注文。今回は1台限りなので、トライアルコースA5サイズを選択しました。ミスった時用にA5サイズで4セット取れるようにレイアウトしておきました。AIファイルだけでなくJPEGも必要なので、指定されたアップローダーで送信する。一部データに間違いがあり、修正(トライアルコースなのにご指摘感謝)。特に急いでいなかったが、1週間程度で到着しました。
最大の難関はデカール貼り
データ制作の間にタミヤのデカールバサミやマークフィット、古くなっていたアートナイフ等を新しく購入し準備を整える。ちなみにタミヤのマークフィットにしたのはミスターホビーのマークセッターは塗装を痛めやすいから。シルバリングが発生するのがかなり不安で、入念にリサーチをしたせいでNoteのおすすめ記事がガンプラばかりになる。文字だけのデカール貼りはそれほど難しくなかったですが、ノブ周辺のドットやエフェクトの表示はかなり難航しました。Cの字型にカットしたデカールをノブの中心に合わせて綺麗に定着させるのがめちゃくちゃ難しい。何度も位置を直したせいで一部糊が効かなくなってしまい、デカールをツンツンしながらマークフィットで修正しましたが完璧とはいかなかった。これは初心者には難しい。
組み立てと完成




デカールが貼れたので、Mr.プレミアムトップコート<つや消し>でトップコート。水性塗料だからあまり期待していなかったが、デカールのシルバリングはやや目立たなくなる。意地悪して見なければわからない程度にはなったのでとりあえず満足。
材料が揃ったのでTHR5を分解し、リフィニッシュを終えたTHR5Aのパネルと入れ替えます。側面には元々ビリ付き防止のテープが貼ってあり、似たようなテープをAmazon.co.jpで入手しておきました。使うのはほんの僅かだけどやっておいた方が良い処理だと思う。ノブはAmplified Partsで注文。国内のGarrettaudioでも入手できると思うが一部在庫がなかったので海外から取り寄せ。THRのボリュームやエンコーダーのシャフトはいわゆるD型で、Neveプリアンプで使われているMarconiスタイルのノブは丸型のシャフトに2方向からネジで固定するタイプなので、とても相性が悪い。D型のカット部分に半円形のプラスチック棒を貼り付けてシャフトをできるだけ円柱に近い形状にしたが完璧とは言い難かった。いつか対策したいところです。
という工程を経て完成したNeve 1073プリアンプ風のTHR5。音も無事に出て、とりあえず満足。全体の工程はYouTube Shortでご覧ください。PCだと観にくいかも。