5年前

ちょうどこのくらいの時間だったか、そのときまだ事務所で働いていた。既に出社してから12時間を過ぎており遅い時間だったが、その6日後から出張だったのでやり残せない案件が山積みだったのだ。そのとき会社に電話がかかってきた、仲良くしている先輩からだった、
「とんでもないことが起こった。出張は中止だ。戦争が始まるぞ。」
なんのことだか、全くわからなかった。
「ニューヨークのビルに飛行機が突っ込んだ!とにかく帰宅してTVつけろ!」
説明されても、理解出来なかった。
とりあえず切りのいいところまで片付けて、車に乗った。テレビっ子ならぬラジオっ子なので、キーを回すといつも聴いている局のラジオが流れ出したが、NHKにチューニングしなおした。最初は事態が飲み込めなかったが、ゆっくり車を走らせ、自宅に着く頃には何が起こったのかハッキリ理解出来た。駐車場に着き、車を定位置に停めたが、車を降りることができなかった。
ビルが一つ崩れた…。
その年初めてニューヨークに行った。人々に騙されたり、励まされたり、色々な出来事が重なって、いっぺんに大好きな街になった。時間があれば通りを歩いて、街の空気を存分に吸った。そのときに見上げたビルのうちどちらかだった。他にも行方不明になったり、墜落した旅客機があるらしい。車の中から出ることが出来なくなっていた。もう出張なんてどうでもよかった。
そのうちビルがまた崩れた。
なにかとんでもない終わりのような始まりのような、恐怖感に教われて、その日はほとんど眠れなかった。
翌朝早起きしてもう観なくなっていたが捨ててはいなかったTVを出して付けた。ワシントンにいる手嶋さんって人が状況の説明をしていた。アメリカン航空とユナイテッド航空の旅客機がハイジャックされ、ワールドトレードセンターに衝突した自爆テロだった。ビルに突入する映像も観た。本当だったのだ。
時間通り会社に行って9/17発成田発ロサンゼルス行きのフライトをキャンセルした。昨夜あれだけがんばってたのに、全てがあっけなく終わってしまった。喪失感を感じた。
その翌年の夏ニューヨークを訪れた。大好きな街に住む人々に笑顔があって嬉しかった。WTCがあったグラウンドゼロには星条旗が揺れていた。不謹慎だと思いながらも、悔しくて自分の中で忘れないために一枚だけ写真を撮った。露出計もないクラシックカメラ(Hasselblad 500C)で一発勝負だったので、大切にネガを持って帰った。
wtc_2002.jpg

全ての人に二度と同じ不幸が起こりませんように。
Rest In Peace.

2件のコメント

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    テロの半年後、ひとりでNYへ訪れました。
    ワールドセンター前にある手向けられた沢山の花やメッセージを見て、
    涙がとまりませんでした。
    ほんとにあんな悲劇が二度と起こらぬよう願いたい。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    原爆ドーム同様のズシーンとくるものがあったよね。
    綿密に練られた計画だったかもしれないが、その後に起こった出来事においても沢山の犠牲者を出し、結局誰も幸せになることができなかったというのが、余計に悲しい。

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